GⅠ獲得は、騎手はもちろん、厩舎側サイド、馬主等、競馬に関っている人なら誰でも目標とするところです。
ですから、同じ目標を持つもの同士がしのぎを削りながら目指しているその過程も重要で、どのようなレースを経てきたかがカギを握ります。
有力馬ともなれば、GⅠまでの計画をしっかりと立てて挑んできます。
競馬を予想する側としては、出走する馬が歩んできたステップをチェックしておく必要があり。
まあ、出走表を見れば過去に出走したレース結果が載っているので、一応チェックしていることにはなるのでしょうが。
しかし、ここではもう一歩踏み込んだGⅠに出走するまでについての課程を少し掘り下げてみましょう。
Stepの最後には、GⅠを図解したものを載せています。
ぜひ、参考にしてください!
トライレースと前哨戦(ステップレース)
GⅠに出走するまでの過程に、トライアルレースと前哨戦(ステップレース)があります。
二つの違いについては、分かりづらいと思うので詳しく説明していきます。
トライアルレースとは
クラシックレース出走のための優先権が与えられるレースです。
どのレースにも出走条件があり、GⅠも例外ではありません。
特にクラシックレース(桜花賞・皐月賞・オークス・日本ダービー・菊花賞を指す)は年齢条件が「サラ3歳」の為、一生に一度のチャンスしかありません。
故に目指す馬も多く出走資格も厳しいものとなっています。
※前までは、古馬が参加するジーワンにもトライアルがありましたが、現在では、3歳限定のレースのみです。
トライアルレースはクラシックレース出走に大いに関係があるので、クラシックレースの出走資格について説明しながら、解説していきたいと思います。
クラシックレースの出走資格は?
もちろん個々のレースにより違いますが、共通していえることは
・優先出走権を得た馬
・総収得金額上位馬
・抽選馬
が条件となります。
注意して欲しいのは、上から順に出走できる確率が高くなります。
例えば、「皐月賞」の場合
フルゲート18頭でその内訳は、優先出走権を得た馬が最大8頭、残りが総収得金額上位馬(10頭)となります。
まず、優先出走権の最大8頭とは、
弥生賞・スプリングステークスが上位3着まで若葉ステークスが2着まで
に優先権が与えられるからです。
つまり、トライアルを勝ち抜いた8頭がまず皐月賞に出走できます。
しかし、そのうち1頭が出走を辞退した場合、
18(フルゲート数)-7(トライアルを勝ち抜き出走する馬)=11
残り、11枠を優先権のない馬たちが、総収得金額上位に出走できる権利が与えられます。
しかし!
総収得金額が同一の場合は、抽選となります。
クラシックの場合、まだそうレースにも出走していないので、総収得金額にあまり開きがない場合が多いのです。
ここまで、一気に説明しましたが整理できましたか?
上に書いたことを図解してみますね。
優先順位 | 馬名 | 成績 | 条件 | 出走希望 | 出馬可否 |
1位 | A 馬 | 弥生賞1位 弥生賞2位 弥生賞3位 |
優先出走 | ○ | ◎ |
B 馬 | × | 出走回避 | |||
C 馬 | ○ | ◎ | |||
D 馬 | 若葉ステークス1位 若葉ステークス2位 |
○ | ◎ | ||
E 馬 | ○ | ◎ | |||
F 馬 | スプリングステークス1位 スプリングステークス2位 スプリングステークス3位 |
○ | ◎ | ||
G 馬 | ○ | ◎ | |||
H 馬 | ○ | ◎ | |||
2位 | I 馬 | 総収得金額・2000万 | 総収得金額上位 | ○ | ◎ |
3位 | J 馬 | 総収得金額・1800万 | ○ | ◎ | |
4位 | K 馬 | 総収得金額・1500万 | ○ | ◎ | |
5位 | L 馬 | 総収得金額・1500万 | ○ | ◎ | |
6位 | M 馬 | 総収得金額・1000万 | ○ | ◎ | |
7位 | N 馬 | 総収得金額・1000万 | ○ | ◎ | |
8位 | O 馬 | 総収得金額・800万 | ○ | ◎ | |
9位 | P 馬 | 総収得金額・600万 | ○ | ◎ | |
10位 | Q 馬 | 総収得金額・500万 | 抽選 (3/7) |
○ | ◎ |
R 馬 | ○ | 落選 | |||
S 馬 | ○ | ◎ | |||
T 馬 | ○ | 落選 | |||
U 馬 | ○ | 落選 | |||
V 馬 | ○ | ◎ | |||
W 馬 | ○ | 落選 |
総収得金額が少なければ抽選です。
しかし、抽選だと運に左右されるところが大きいので、実力のある馬は当然不利ですね。
せっかく、クラシックを目指し日程をこなしてきても、抽選に落ちれば意味はありません。
その為、確実に出走するための保障が欲しいわけで、それが優先出走権(この権利があれば、出走を優先してあげますよという権利)です。
この優先出走件が与えられるレースを「トライアルレース」といいます。
優先権=出場権
といってよいでしょう。
次にトライアル戦とは具体的にはどのようなレースを指しているのでしょうか。
GⅠレース名 | トライアルレース名 | 優先権 獲得条件 | 距離 |
桜花賞 | チューリップ賞(GIII) | 1~3着 | 芝・1600m |
アネモネステークス(OP) | 1~2着 | 芝・1600m | |
フィリーズレビュー(GII) | 1~3着 | 芝・1400m | |
皐月賞 | 弥生賞(GII) | 1~3着 | 芝・2000m |
若葉ステークス(OP) | 1~2着 | 芝・2000m | |
スプリングステークス(GII) | 1~3着 | 芝・1600m | |
NHKマイルカップ | ニュージーランドトロフィー(GII) | 1~3着 | 芝・1600m |
アーリントンカップ(GIII) | 1~3着 | 芝・1600m | |
優駿牝馬 (オークス) | 桜花賞(GI) | 1~4着 | 芝・1600m |
フローラステークス(GII) | 1~3着 | 芝・2000m | |
スイートピーステークス(OP) | 1~2着 | 芝・1800m | |
東京優駿 (日本ダービー) | 皐月賞(GI) | 1~4着 | 芝・2000m |
青葉賞(GII) | 1~2着 | 芝・2400m | |
プリンシパルステークス(OP) | 1着 | 芝・2000m | |
秋華賞 | 紫苑ステークス(OP) | 1~2着 | 芝・2000m |
ローズステークス(GII) | 1~3着 | 芝・1800m | |
菊花賞 | セントライト記念(GII) | 1~3着 | 芝・2200m |
神戸新聞杯(GII) | 1~3着 | 芝・2400m |
前哨戦(ステップレース)とは
ジーワンで優勝する為には、ベストな状態が望まれます。
そうなると、ジーワンレース前に好条件のレースを一度試しておきたいものです。
好条件とは、
参加するジーワンレースと距離が同じ
参加するジーワンレースとコース(開催場)が同じ。
参加するジーワンレースとの間隔がベスト。
など。
このような調整的なレースを前走に走っておきたいという考えは皆同じなようで、上の条件を満たしたレースに自然と有力馬たちが集まってきます。
そういう傾向が強いレースを前哨戦レースと呼びます。
2014年からは、対象ステップレースで1着をとれば、優先出走件が与えられるようになりました。
GⅠレース名 | ステップレース名 | 距離 |
フェブラリーステークス | 東海ステークス(GII) | ダート・1800m |
根岸ステークス(GIII) | ダート・1400m | |
大阪杯 | 中山記念(GII) | 芝・1800m |
金鯱賞(GII) | 芝・2000m | |
高松宮記念 | 阪急杯(GIII) | 芝・1400m |
オーシャンステークス(GIII) | 芝・1200m | |
天皇賞(春) | 阪神大賞典(GII) | 芝・3000m |
日経賞(GII) | 芝・2500m | |
ヴィクトリアマイル | 阪神牝馬ステークス(GII) | 芝・2000m |
福島牝馬テークス(GIII) | 芝・1800m | |
安田記念 | マイラーズカップ(GII) | 芝・1600m |
京王杯スプリングカップ(GII) | 芝・1400m | |
スプリンターズステークス | キーランドカップ(GIII) | 芝・1200m |
セントウルステークス(GII) | 芝・1200m | |
天皇賞(秋) | オールカマー(GII) | 芝・2200m |
毎日王冠(GII) | 芝・1800m | |
京都大賞典(GII) | 芝・2400m | |
エリザベス女王杯 | 府中牝馬ステークス(GII) | 芝・1800m |
マイルチャンピオンシップ | 富士ステークス(GIII) | 芝・1600m |
スワンステークス(GII) | 芝・1400m | |
チャンピオンズカップ | みやこステークス(GIII) | 芝・1200m |
武蔵野ステークス(GIII) | 芝・1600m |
よりレース間の関係が分かるように図にしてみました。
トライアルレース一覧表
G1 | GⅡ | GⅢ | リステッド |
春のトライアル・ステップレース
秋のトライアル・ステップレース
注意して欲しいこと
分かり易い様、図解で説明し、前哨レースは代表的なものを挙げましたがそれが全てではありません。
もちろん他のレースからの直行組みもあります。
また、図のような経路を必ずしもとるわけではありません。
最近の競馬は、このような図式に囚われない独自路線を走る馬も多くなってきています。
上で示した路線がタイトルを取るためのベストの路線とは一概に言えず、あくまで、競走馬の体調や出来、特性を重視した日程がその馬のベスト路線であるということも意識しましょう。
ですが、トライアル戦・前哨戦を通過してのジーワン挑戦は「王道」であることは確かです。